生産者が収穫した赤く熟したコーヒーの果実は、何ヶ月かの時と幾つもの工程を経て、1杯のコーヒーとなります。
その過程を簡単に辿ってみました。
大雑把にコーヒーについて
店で売られているコーヒー豆は、アカネ科コフィア属の木になっている、赤く完熟した果実の種子(タネ)を焙煎(or焙煎して粉砕)したものです。
コーヒーノキの原産地はエチオピアだとされています。
コーヒーノキの種類として、アラビカ、ロブスタ・リベリカの3種類が栽培種として知られていた時代もありましたが、現在、栽培されているコーヒーノキの種類のほとんどはアラビカ種とロブスタ種となっています。
日本に輸入されているのは、アラビカ種とロブスタ種です。
コーヒーノキの果実は、昔から薬用として用いられていたようですが、その後14~15世紀頃から独特な飲用植物として知られるようになり、今では、世界中で愛飲される飲料となっています。
家庭や喫茶店で飲むレギュラーコーヒーには、主としてアラビカ種のコーヒー豆が使用されています。
ロブスタ種は、インスタントコーヒーの原料として、主に使用されています。
コーヒー豆の主要生産国は、ブラジル・コロンビア・インドネシアなどで、赤道を挟んで南北回帰線の内側が栽培適地と言われています。
コーヒーの味や香りは、品種・産地、それに栽培者・栽培環境によって異なります。
そのため、各種のコーヒー豆を混合(ブレンド)して、苦味・酸味・甘味・香りを整えたりもします。
また、コーヒーの味は、焙煎の仕方や焙煎の度合いによっても大きく変わります。
一般的に、浅煎りでは酸味が、深く煎ると苦味が強く感じられると、コーヒー関係の書物に書いてあります。
コーヒーノキを栽培の面から考察すると、サビ病に代表される病気や害虫、それと霜害との激しい戦いを乗り越えて、栽培に適する温度や土壌等を求めた結果、現在では、世界各地で栽培されるようになっています。
コーヒー生豆の精製
コーヒー豆の果実は、外皮と果肉、それに種子で構成されています。種子は、灰緑色をした薄い種皮で被われています。
果実の中には、普通の種子が2個入っています。樹上で完全に熟した果実を収穫して、その生豆を採取します。
(ブラジル・ダテーラ農園のコーヒー生豆精製)
コーヒー生豆の採取処理方法には、乾式法と湿式法があります。
これらの方法で採取処理されたコーヒーの生豆を、一箇所に集めて乾燥させます。それから、脱穀機と研磨機にかけて、内皮と銀皮を除去します。そして、生産国から消費国に出荷されます。
コーヒー豆の焙煎
コーヒーの生豆を高温の火力で炒ることを、焙煎(ロースト)と呼んでいます。
緑黄色の、すこし発酵臭のともなった青臭いコーヒーの生豆は、焙煎によって水分が除かれ、成分が化学変化して、コーヒー独特の色や香り、それに風味を作り出します。
焙煎度(炒り具合)は、深煎り、中煎り、浅煎り等と、色や味で感覚的に区別していす。ですから、同じコーヒー豆でも、鑑定人により、焙煎度が異なります。
焙煎コーヒー豆
コーヒーの生豆には、味も香りもありません。焙煎という加熱工程を経て、コーヒーの色・味・香りが作り出されます。
焙煎によって、コーヒー生豆に含まれている成分から、新しいコーヒー特有の酸味が作られ、新しい苦味物質が作られ、数百種類といわれる香り成分が作られます。
そして、それらの物質が微妙に影響しあって、コーヒーの素晴らしい香味を作り出しています。
この焙煎コーヒー豆をコーヒーミルで粉砕、コーヒー粉にして、ペーパーフィルター、ドリッパー、サーバーなどの抽出用道具を使って、コーヒーの成分をお湯の中に溶け込ませた液体が、私たちの愛飲しているコーヒーです。
美味しいコーヒー
コーヒーの美味しさの主役、それは間違いなく香りです。
旨味・酸味・苦味・塩味・甘味だけでは、人は美味しさを感じることができません。それらの味に香りが存在していて、はじめて美味しいと感じることができます。
風邪をひいて鼻の詰まった状態でコーヒーを口に入れても、弱い甘味・酸味・苦味を感じるだけです。
よほど風味の完璧なコーヒーで無い限り、コーヒーの香味を感じることができません。
ですから、風邪をひいている時に飲むコーヒーは、美味しくありません。
コーヒーに香気物質が含まれていなければ、コーヒーの美味しさの90%以上が失われてしまいます。
嗅覚細胞で感知した香気物質は、舌の味蕾で感知される味覚物質と一緒に脳に伝えられて、美味しさとして認知されるわけです。
美味しい・美味しくないという食物の味は、食物に含まれている微量の香気物質が、嗅覚神経細胞を経て、脳に伝達されることによって認識されていると言われています。